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1986年10月生まれだから、録音時にはまだ16歳だった女性アルトサックス奏者のデビュー盤。チャーリー・パーカー作曲の3曲に加え、スタンダードナンバーと自分のオリジナルで構成されている。パーカーのスタイルを受け継ぐオーソドックスなジャズをよく勉強していることが分かる内容だ。
もちろんまだ完成されてはいないが、音の粒が今よりそろってくればフレーズの存在感も増すだろうし、スピード感もアップするはずだ。テクニックに対する自信が深まれば、もっとダイナミックな演奏を聴かせてくれるだろう。だが、それはそれとして、彼女の持っている現時点での魅力はアルバムの随所に感じられる。この若さでパーカー・フレーズを楽々と吹くなんて! という当たり前の感想はともかく、デューク・エリントン作曲のバラード「イン・ア・センティメンタル・ムード」を、風格さえ感じさせる落ち着きで演奏しているのを聴くと、なかなかの大物ではと思えてくる。
オリジナル曲ではビバップから少し離れる。「ハウ・トゥー・メイク・ア・パール」はモーダルな曲調、「ハイデン」はラテン・リズムを使った曲だ。果たして今後の進路がどうなるかのヒントがここに示されているのだろうかと興味をひかれる。4曲に付き合っているピアニストのハロルド・メイバーンのプレイも聴きどころだ。コードを弾いたときの音の分厚さが並大抵ではない。音の粒子がぎっしり詰まって岩盤のようになっているのではと思ってしまうぐらいの量感があるのだ。(松本泰樹)